オーセブンCADコンテスト2019

学校部門受賞作品


本年もたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。表紙を付けたレイアウト、街並みをイメージさせる公園など、これまでよりもその家に住む人、そこの公園に遊びに来る人のことを想像力を持って考え、配慮した作品が多くありました。その中から選んだ入選作品をご覧ください。






【作品名】自然がいっぱいで目が休まる庭

奈良県立磯城野高等学校 環境デザイン科 山根大周様

【作品コンセプト】
自然を多く使い、いいなと思った植物をいい感じにおけるように各要素の配置にこだわりました。洋風の庭を基本に、幾何学的にバランスよく植栽を配置できるように区画を構成しました。直線の部分と曲線の部分を組み合わせ、端から端までラインがつながり、庭全体で緩やかな流れが生じるようにしました。植栽は高木、低木を規則的に配置し、高低差を全体的につけることで、一定のリズムを生むように選びました。


【オーセブンからのコメント】
駐車場1台分で門扉のないセミクローズドプラン。天然素材や植栽を使って品良くまとめあげ、トータルコーディネート、全体的なバランスが素晴らしい作品です。

天然石貼りの門袖と舗装、枕木を使用したファサードのワンポイントは、タイトルの「自然がいっぱい」ぴったりです。素材の落ち着いた色合いと柔らかな印象の樹木をメインとした植栽の選択で「目が休まる」が想像できます。平面のファサード、駐車場周りは直線で構成されているのに、素材や色合いでこの柔らかな雰囲気の演出が出来ているのが素晴らしいです。高木、低木のバランスや配置の工夫もイメージ作りにつながっています。

機能面でも門周りや駐車場からの動線もきちんと考えられているところ、塀の高さを細かく変えて同じ素材でも変化を付けて均一でない動きが感じられます。また階段部分にスロープがあるのはバリアフリーの配慮でしょうか。ここもポイントです。

夜景パースの演出もアップライト、ポールライトなど部位毎に使い分け、「お施主様にイメージを伝える手段としてのパース」を意識した提案になっています。

トータルの完成度の高さはピカイチで、大賞作品に選ばせていただきました。



【作図の感想・工夫点】
正面の枕木に段差を付け、門の左右の塀を加工し、直線でも単調にならないようにしました。所どころに曲線を使い、全体としてうまく調和させることができました。自然が多く、眺めるだけで豊かな気分になれる庭になったと思います。


【受賞コメント】
この度は、このような素晴らしい賞を受賞することができ、感謝を申し上げます。
3年生から「造園CAD」の授業がはじまり、ケンブリッジの技術の習得と、造園デザインの作品制作が始まりました。私はその頃から将来建築関係の仕事に就きたいと考えていたので、その勉強をかねて作品制作に取り組みました。1学期に練習作品をいくつか完成させた後、2学期からo7デザインコンテストへの作品制作がはじまりました。最初の作品は早めにできていたのですが、自分で納得できず、新たに2作品目を作ることにしたので、締め切り数日前まで制作は続きました。
応募した作品のうち、最優秀賞をいただいたのは2作品目です。1作品目は敷地が広く感じられるように地割にこだわって制作しました。斜めの線を多く使い、かなり斬新なデザインになったと思います。先生からの評価も高く、自分でも良い感じにまとまっているとは思ったのですが、どこか納得いくものではありませんでした。
自分なりに分析した結果、1作品目は高低差があまりなく、植栽の組み合わせが単調だと気づいたので、2作品目ではその2点を修正できるように考えました。特に植栽に関しては、高低差が出てバランスよく見える組み合わせ、また、彩りよく見える組み合わせとなるように時間をかけて選びました。
私は作品制作を進めるにあたって、きっちりと完成像をイメージしてから作りはじめるのではなく、作りながらイメージをふくらませ、パズルのように組み合わせていきながら進めていきます。今回、一番力を入れた部分は駐車場回り、特にその左側です。統一感を持たせつつも色合いにもこだわり、高低差もバランスよく配置できて、自分でも納得のいく仕上がりになりました。また、昼夜楽しめるように照明の配置、ライトアップにもこだわりました。制作期間の最後の方はライトアップの修正と画像のレイアウトの変更をくり返しました。
このような私の制作方法には直感的に操作でき、変更点が確認しやすいケンブリッジがとてもあっていたと思います。

卒業後は建築関係の学校に進学します。今回のコンテストへの挑戦はCADソフトの使用方法を学び、設計のセンスを磨く、良いきっかけになりました。この喜びをばねに進学してもしっかり勉強を頑張り、造園、建築の分野を問わず様々なコンクールに応募していきたいと思います。


【指導者コメント】
昨年度に引き続き、最優秀賞を受賞できたことに学校全体で喜んでいます。
奈良県立磯城野(しきの)高等学校環境デザイン科は、緑化植物の育成、環境保全について理解するとともに、緑地の目的や環境に応じた快適な生活環境を創造するための知識・技術を習得します。また、造園計画や緑化に主体的に取り組むことのできる能力と態度を身に付けることを目指しています。

本校では、3年生で履修する学校設定科目「造園CAD」の授業で庭園や公園の「デザイン」にケンブリッジを利用して学習しています。造園デザインを教える教員として、今年度は昨年度までの結果と経験をもとに、コンクールに向けた作品制作の指導方法を確立させることを目標に授業を進めてきました。ただ、初めてCADを学ぶ生徒たちに対して、デザインの方向性も決めてしまうような指導を行うと、自由な発想を奪ってしまうのでは、と不安になるところもあり、迷うことも多い一年でもありました。
教員側の迷いとは別に、生徒達は先輩の受賞を励みに意欲的に作品制作に取り組みました。パソコンの中に保存されている昨年度までの作品から、自分の方向性に近いものを選び、良いところを取り入れていました。
今回、入賞した山根君や根本君は作品の方向性こそ違いましたが、どちらも過去の作品を自分なりに分析し、自身の個性と合わせることで自主的に作品制作を行いました。非常にスマートで空間の使い方がうまい山根君の作品もすばらしかったですが、和風庭園の要素を詰め込んだ根本君の作品もすばらしかったので、2人が評価されたことをうれしく思います。
07デザインコンテストで賞をいただけたことで、生徒達の意欲も上がり、作品の質も向上しました。生徒達は先輩達に学び、自ら方向性を決めていくのだと学ばされました。
 本人の受賞コメントにもありますが、山根君は今回2作品を応募しました。1作品目も十分に良い作品でしたが、それに満足せず、自分の理想を追求したことが今回の結果につながったのだと思います。今回のコンクールの評価を得て、山根君はさらに妥協なく理想の「デザイン」を追求し、自らの可能性を広げていってほしいと思います。
今後もより良い理想的な生活環境のあり方を深く考察し、主体的に作品制作に取り組んでいけるように指導を続けていきたいと思います。









※入選5作品の紹介順は、学校名の五十音順です。


【作品名】南国リゾート

沖縄県立中部農林高等学校 造園科 上地辰輝様


【オーセブンからのコメント】
周囲を海に囲まれたリゾート地のバンガローを形に。植栽の地盤と、デッキ部分を支える補強もなど現実的な部分もありますが、夢のある作品です。色合いや植栽選びがイメージぴったりでした。







【作品名】IT’S MY HOUSE

沖縄県立中部農林高等学校 造園科 天願操汰様


【オーセブンからのコメント】
建物を敷地の北西に寄せ、南と東に庭園スペースを広く。お庭の四ツ目垣と植栽の色合いが統一感がでて落ち着いた雰囲気にまとまっています。常緑と落葉、門脇の桜で四季折々の表情が楽しめそうです。







【作品名】緑とほのぼのLIFE

沖縄県立北部農林高等学校 食品科学科  大城源晴様


【オーセブンからのコメント】
南国の強い日射しをしのぐため、常緑をメインに配置した庭。ウッドデッキの形も面白いです。パースからも青空と植栽のコントラストで日射しの強さがうかがえます。







【作品名】Tropical Garden

京都府立農芸高等学校 環境緑地科 Espinosa Daniel Dela Cruz様


【オーセブンからのコメント】
お庭や裏庭など夜景だけでなく、モンステラやハイビスカス、アンスリウムなど南国をイメージさせる葉や花をレイアウトに飾ることでプランにプラスしたイメージ演出がありました。







【作品名】ケヤキとサクラのある公園

東京都立農芸高等学校 緑地環境科 吉根陽太郎様


【オーセブンからのコメント】
住宅に囲まれた街区に建てられる公園がイメージできる提案。センターに緑陰となるケヤキを据え、目隠しとなる外周向けには常緑樹、四季折々の変化を見せる落葉や花木は住宅側に、と樹木の特性が良く考えられています。住宅側には目隠しの塀や照明の抑制などの配慮がある行き届いた提案となっています。







【作品名】習得公園

東京都立農芸高等学校 緑地環境科 古田寛佳様


【オーセブンからのコメント】
マンションや住宅近くの公園が演出され、周りに住む人への提案を感じます。一見フラットですが、良く見ると入り口にスロープがあり、園内は一段低くなっています。小さな子どものボール遊びへの配慮が感じられます。おそらく実際に施工されれば、より広がりを感じられることでしょう。







【作品名】和風モダン庭

東京都立農芸高等学校 緑地環境科 斎藤桃子様


【オーセブンからのコメント】
学校の敷地内に製作するモデル庭園のためのプラン。特に高低差の感覚は実際に施工してみて初めてわかるもの。学習の成果がしっかり活かされているためか、無理の無い形に設計できています。灯篭や松などの和のお庭と幾何学模様の平板を配置したモダンのお庭。そこを仕切る黒い板塀が和にもモダンにもマッチして、全体が和モダンというテーマに沿って上手に表現出来ています。







【作品名】涼やかな空間

鳥取県立倉吉農業高等学校 永井茉緒様


【オーセブンからのコメント】
真夏になると子供たちで賑わいそうな公園。ベンチはお年寄り向けへの配慮としてだけでなく子どもを見守る親にもありがたいです。遊ぶ子供たちにとっては、変化に富んでいて、ずっと楽しめそうです。水の色とデッキの色合いが何とも涼し気な雰囲気です。







【作品名】池のある和風庭園

奈良県立磯城野高等学校 環境デザイン科 根本環槙様


【オーセブンからのコメント】
ダイナミックな石組みと雄々しいクロマツで迫力のある和風庭園に仕上がっています。個人庭ながらも大規模な回遊式庭園の様式を取り込むことに成功していますね。砂紋をイメージした舗装やアールを描いた袖壁も面白いところです。







【作品名】広くくつろげるデッキがある庭

奈良県立磯城野高等学校 環境デザイン科 山根大周様


【オーセブンからのコメント】
大胆なゾーニングで、駐車場、アプローチが配置されています。オープンの良さを活かして、主庭も街路の一部のような趣。直線的な構成の中にデッキの曲線が、くつろぎスペースとしての庭を演出するのに一役買っています。今にも車が動きそうなパースの取り方やそこに立ってお庭を見ているようなパースの演出も素晴らしいです。


学校部門結果発表2018最優秀賞自然がいっぱいで目が休まる庭自然がいっぱいで目が休まる庭最優秀賞最優秀賞発表帯学校_入選作品入選南国リゾート写真入選IT’SMYHOUSE入選緑とほのぼのLIFE緑とほのぼのLIFE入選TropicalGarden入選ケヤキとサクラのある公園ケヤキとサクラのある公園入選習得公園習得公園習得公園入選和風モダン庭和風モダン庭和風モダン庭入選涼やかな空間入選池のある和風庭園池のある和風庭園入選広くくつろげるデッキがある庭



【総評】
時代でしょうか、今回は池やリゾート地の海など水を取り入れ、安らぎや癒しをテーマにした作品がいつもより多かったように感じます。また、エクステリア建材、庭の樹木や景石を、どのように活かすか、人の動きはどうなのか、近隣からの目線は?訪れたお客さんがどんな印象を抱いてくれるか、色々な事を考えたことと思います。そのような配慮が、応募作品の随所にこれまで以上に見られました。

最後になりますが、改めまして、諸先生方にも厚く御礼申し上げます。若いエネルギッシュな想いをきちんと図面という形に落とし込むためのご指導は並々ならぬ大変さだったかと思います。また応募に際してのご手配などのご尽力につきまして、心より感謝申し上げます。


過去受賞作品