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【デザイン】 設計室便り
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英国ガーデンのお便り【コッツウォルズの建築 編】
エクステリア造園ガーデニング図面CAD設計室からのお便りです。
特集!イングリッシュガーデン第八弾
コッツウォルズの住宅が なぜ美しいのでしょうか。ちょっと検証です。



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屋根、壁、窓、ドア。実にシンプルです。
■ 屋根
屋根は天然スレートで さほど大きくはない。大きいものは きっと、売り物として都会の建物用に出して 残りの 安物で葺いていると 推測です。しかしこの 小ぶりな大きさがいい。壁に使っている ライムストーンと 大きさが合っているのです。壁のライムストーンも大きく立派なものではなく 小ぶりの安いものを使ったと思います。

大げさな棟の飾りがなく 実にシンプルに納めています。棟の飾りが大きくなると 威圧感を与えることになります。棟の瓦をたくさん葺くと立派に見えたり 金のしゃちほこのようなものを載せたがるものです。
しかし そんなものは ない。実に 質素そのもの。無駄に お金を使わない。

さらに この天然スレートの色が 壁の色と 同じなのです。(違うのもありましたが)シンプルな住宅を設計しようと心がけても 壁と屋根と窓の方立てが 同じ色でデザインすることは 至難である。コッツウォルズの家が美しくシンプルなのは 壁・屋根・開口部の色が同色だからです。
 
鼻先や妻の破風なども 実に簡素で シンプルです。屋根が天然スレートでも 鼻先はスレート1枚だけなので 軽く見えます。


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■ 壁 
壁は この地方のライムストーン。蜂蜜色。こちらで採れる蜂蜜はこんな色をしている。

大きさもレンガほどの大きさ 手作業がしやすい大きさだ。見た目にも いい。

建物には基礎があり その基礎の上に壁を立ち上げる。したがって 壁には 基礎の部分とその上の壁が 分かれているのが一般的だ。

コッツウォルズの建物と塀は 地盤から直接 壁が立ち上がっている。線がないので 一枚の面として 余計な線がないだけ すっきり見えるのだ。


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■ 開口部
窓 も ライムストーンを使った 窓である。障子は木でも 方立ては石を使っているものが多い。

この方立は 間柱として使って 開口部の梁の断面を小さくすることができるから だろう。
開口上部の小庇が 面白い。梁の断面を補強し 防水の機能をさせる 小庇が 唯一 デザインの臭いを感じる部分である。

木部の障子は ペンキ塗りが多い。ガラスを止めるのに 油性のパテを使っている。これが白いので サッシュの部分のペンキも 白なのだろうと思う。しかし 白が 一番いい感じに映る。色を使っているのが ドアと窓の障子だけである。


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■ 美しさの秘密
コッツウォルズの建物が美しいのは 何故か

その多くは 荘園に働く人のためのもの いわば社宅である。多くの社宅がそうであるように 贅沢なものはない。無駄なものはすべてそぎ落としている。

日用品として職人が作り出す 美しさをもっている。ウイリアム・モリスがいっている美しさというものは これ見よがしの 作為があるデザインを否定して こつこつと 手作業で作り出す 職人の手馴れた 技で作られた美なのだろう。

単純な形 と 無駄のない納まり。 自然素材の石が 時を経て 美しさをよりつむぎだしている。

コッツウォルズの建物の美しさを作り出している最後の秘密は 「しみ」 と 「こけ」 である。
カビや雨水のシミ 外壁のライムストーンは 様々な色をしている。これは 一面の壁からとった写真である。


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屋根には 黒いコケが多く 遠目から眺めると 屋根が黒っぽく見えるのである

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外壁や屋根には その場の環境に合った カビやコケがしっかり付く。北や南の方向に合った 自然のグラデーションが吹き付けられたように貼りつくのである。これが 汚れを隠し 味わい深さをかもし出しているのだ。


イギリスの人に親近感をもったのは このねずみ返しである。苔むしたねずみ返しが 価値があるという感性がうれしい。

コッツウォルズの住宅は 苔むすことで 緑の環境の中に ひっそりと 一体化して 自然のままに あるという 美しさを 作り出している。t-nan