【レポート】2015/03/11
設計室便り:初春の遠州名園巡り2015
昨年の11月、「晩秋の湖北五山巡り」と称して、静岡県の浜名湖北岸にある、5つのお寺巡りをしてきました。
*晩秋の湖北五山巡り その1 龍潭寺、初山宝林寺
*晩秋の湖北五山巡り その2 方広寺、大福寺、摩訶耶寺
記事を書くにあたり、ネットで色々な情報を集めてみると、この地方にはまだまだ素晴らしいお庭のある寺社があることがわかりました。そこで、年が明けた週末のある日、息子といくつかのお寺を回ってみることにしてみました。
キーワードとして上がってきたのは、池泉築山式庭園。全国各地にある江戸初期の回遊式庭園が知られてますが、平安の面影を残す摩訶耶寺庭園に見られるように、観賞式も含めると、古来より続く、日本庭園の代表的な形式です。実際の水がなくても、砂利を水に見立てた枯山水式庭園も、地割の形式としては池泉築山式庭園と言えるものもあります。
小堀遠州 満天星の庭:気賀の長楽寺
上段の間より眺めるととてもよくわかるのですが、同じ池泉築山式でも、龍潭寺と違い、奥行き方向の広がりがあるのが特長的です。特に、遠景となる尉ヶ峰や光岩を借景として、十三重塔や三尊石のある築山とその後ろの竹林を中景、そして築山手前の池と池被りの松の近景、とその遠近構成が非常に見応えあります。春と秋、素晴らしい景観を見せてくれそうなドウダンツツジについ目が行ってしまいますが、こういった庭の造りに着目してみても面白いかもしれませんね。
駐車場にあった看板によると、2/10〜3/30は梅祭り、5/10〜5/30はさつき祭り、11月はドウダン祭りと、四季折々のお祭りが催されているとのこと。
なお、庭園観賞の拝観料は300円です。
江戸初期の枯山水庭園:金指の実相寺
悲しいかな、真冬の西日のおかげで、写真を撮るにもコントラストが強すぎ(私の腕では)満足いく写真が撮れませんでした。冬枯れした芝生の築山も悪くないですが、やはり緑のきれいな時にまた来たいですね。
遠州流庭園:鷲津の本興寺
本興寺は、実は私の地元なのですが、幼稚園の頃、春の写生大会で来たきりで、実に40年振りの訪問でした。しかしながら、訪れてみると数々の建築、内装、そして庭園の文化財が盛り沢山。これまでなんともったいない事をしてきたのでしょう。前回、前々回と巡った浜名湖北岸の数々の名園も然りです。しかし考えてみるに、これまで積み上げてきた経験があって、初めて良さが分かる歳になってきたと言うことなのかも知れませんね。
ともあれ、今回は真冬の訪問でしたので、庭としてはもっとも静の時。これから芽吹きの春となり、命に満ちあふれる夏、もの悲しさを漂わせる秋と、四季の移ろいを楽しむことが出来ます。また来てみたいと思います。そうそう、ここは桜の名所でもあるんですよ。楽しみです。
なお、本興寺の遠州流庭園、奥書院の拝観料は300円なり。
*晩秋の湖北五山巡り その1 龍潭寺、初山宝林寺
*晩秋の湖北五山巡り その2 方広寺、大福寺、摩訶耶寺
記事を書くにあたり、ネットで色々な情報を集めてみると、この地方にはまだまだ素晴らしいお庭のある寺社があることがわかりました。そこで、年が明けた週末のある日、息子といくつかのお寺を回ってみることにしてみました。
キーワードとして上がってきたのは、池泉築山式庭園。全国各地にある江戸初期の回遊式庭園が知られてますが、平安の面影を残す摩訶耶寺庭園に見られるように、観賞式も含めると、古来より続く、日本庭園の代表的な形式です。実際の水がなくても、砂利を水に見立てた枯山水式庭園も、地割の形式としては池泉築山式庭園と言えるものもあります。
小堀遠州 満天星の庭:気賀の長楽寺
そんな池泉築山式庭園の、この地方での代表格は、以前もご紹介した龍潭寺庭園なのですが、その近くにも、名園と言える素晴らしい池泉回遊式庭園があることを聞き、まずはここを訪ねてみました。 気賀の長楽寺。真言宗の古刹です。 少し離れた駐車場から歩き、山門までやってきました。う〜む、なんとも古刹と呼ばれるのにふさわしい門構え。 |
ひとしきりお話を伺って、他の拝観客も来たので、お庭の方を拝見することにしました。 こちらの築地塀はなんと室町時代につくられたもの。白い漆喰の下には、日干し煉瓦が見えてきています。なるほど工法がよくわかります。 | 県指定の文化財 梵鐘。こちらは鎌倉時代から伝わるもの。 | 木造の馬頭観音座像を祀るお堂。ただ残念ながら、昨年より馬頭観音様の馬頭の部分が落っこちて、現在修理に出しているとのこと(^^;。 |
客殿前庭。中門、築地塀、露地、2本のヤマモモ、そして石。真冬の傾きかけた日射しの中、強いコントラストで浮かび上がり、なんとも良い感じに見えました。 |
池の左側にある亀石。右端にある鶴石と対になっています。この池に掛かる竹の造作物。これなんて言うんでしょうね?浅学にして不明。ご存じの方がいらしたら、ご教示ください。 | 客殿を大きく回り込むと、東側にもお庭がありました。新石庭と名付けられています。 |
なお、庭園観賞の拝観料は300円です。
江戸初期の枯山水庭園:金指の実相寺
続いて、この地域では珍しい、枯山水庭園のあるという、金指の松源山 実相寺(實相寺)へ行ってみました。臨済宗方広寺派の古刹です。 急な坂道を上がり、小学校の脇を進むと、山門があります。門の奥に鐘楼門と広い境内が見えます。 |
正面に本堂がありました。枯山水庭園は、その右側です。右端の建物が観音堂。こちらでは、拝観料の徴収はなく、その代わり維持費用の募金箱が設置されていました。他の庭園と同程度の額を募金しておきました。 |
遠州流庭園:鷲津の本興寺
翌日となります。この日は、龍潭寺、長泉寺と並ぶ、小堀遠州作、遠州三名園(この遠州が、小堀遠州を指すのか地域を指すのか調べたけどよくわからない(^^; )の一つ、鷲津の本興寺を訪れました。これまで浜名湖北岸のお寺を巡ってきましたけど、ようやく南岸へ。 |
本興寺は、法華宗陣門流の寺院。創建は南北朝時代とのこと。境内は広く、奥書院、客殿などの文化財の他、塔頭として長勝院、光明院、玉葉院、東光院の四院があります。 | 本興寺梵鐘。大晦日に突きに来ました。 | 本興寺客殿。江戸時代、日渕聖人の建立。市の有形文化財に指定されています。 |
客殿から大書院の玄関へと繋がる中門。別名朱門。薬医(矢喰)門という形式。 | 奥書院の入り口。元々豊橋の吉田城内にあったものが、惣門(山門)と一緒に寄進されたものだとか。 | 大書院前庭。先ほどの中門からこちらに向かっているのが分かります。朱門の謂われがよく分かりますね。門が朱色に見えます。 |
受付を済ませ、大書院の広間にて案内の放送を聞きます。この間には、岸駒 双竜争珠の図、花鳥図屏風、上段の間に谷文晁の四季山水画など文化財がずらり。 そして北側を見ると、見事な池泉観賞式庭園を眺めることが出来ます。蓬莱式池泉観賞庭園と称されています。池の中央の島が蓬莱神仙島でしょうか。 |
右側に奥書院が見えました。手前の袖垣は、片袖垣の屋根付だけど、5尺から1間くらいあるのかな?袖垣と言うよりは仕切り垣か。 | 遠州流庭園の南側。広間から縁側に出て、アングル変えて見ることが出来ました。 | 大書院から客殿へ向かう回廊。 |
回廊からも庭園がのぞき見出来ます。手前の樹はモミジ。幹の途中からモチかなんか生えて訳がわかんなくなっちゃってますけども。 こうしてみると、池がかなり広い。 | 回廊沿いにあった厠のお手洗い。いいですねえ。陶器の鉢もいいですけど、黒い蛇口がまたいいチョイス。 | 回廊から中庭を見る。正直一番驚いたのは、浜名湖南岸のこの辺りでも、庭にしっかり苔が定着してるってことでした。 |
大書院から客殿へ行った後は、奥書院へやってきました。この奥書院そのものも重要文化財ですが、その他歴史的な資料あり。写真撮影不可のものが多かったのでご紹介は割愛します。 奥書院から庭を見ると、また違った表情を見せます。出島の周囲の護岸も趣があります。護岸の一つは亀のイメージでしょうか。そう考えると、蓬莱神仙島も鼇(亀)の形をかたどってるようにも見えてきます。 |
ともあれ、今回は真冬の訪問でしたので、庭としてはもっとも静の時。これから芽吹きの春となり、命に満ちあふれる夏、もの悲しさを漂わせる秋と、四季の移ろいを楽しむことが出来ます。また来てみたいと思います。そうそう、ここは桜の名所でもあるんですよ。楽しみです。
なお、本興寺の遠州流庭園、奥書院の拝観料は300円なり。