【レポート】2020/01/01
千葉ラボ:古民家再生New garden life(5)
2013年11月。千葉県香取の里山で始まった、新しい住まいかた提案の実験場【千葉ラボ:古民家再生 "New garden life" 】。その密着取材レポートです。【ものづくり】【庭づくり】【野菜づくり】の、なにこれ!をつぶやきます。
◆今月の特集:【母屋:リビングルームのリフォーム その1】
千葉ラボ:全景(正面) 撮影時期 2015年9月↑
裏山を背景にして手前に拡がる香取の里/千葉ラボから、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。 オーセブン株式会社 代表取締役 七海 崇
・・・ 1月 「里山」に思う ・・・
香取の里・・・その懐は予想以上に大きかった。私にとっては挑戦の場であり、少年のごとく向き合う大地ですと、ここでの7年間を振り返る亭主。ものづくり・庭づくり・野菜づくりの5万点を超える記録を撮り続け、2019年8月より、千葉ラボならではの切り口で「古民家再生New garden life」を発信しています。今号5シリーズ目は、里山からご挨拶です。
母屋:茅葺の屋根裏
・・・こんなことがありました。「初めて母屋(リビングルーム)の屋根裏に入ろうとして、天井板を持ち上げた瞬間です。いつもと違う空気に囲まれ、『何だろう』とライトで屋根裏を見渡しました。すると、光りが届かない奥のほうに(私が勝手に思うだけですが)、私を見据えるこの家の主(あるじ)が居たのです。ぎょ!っとしました。私は、100年昔の先人の思いに触れたような気がして、頭を下げ、丸太の梁が並ぶ向こう側に無言の挨拶をしました。」 ・・・亭主が里山に移り住んで3回目の冬(2016年1月)の出来事でした。
裏山の‘はやとうり’
千葉ラボの裏山。亭主は、「ここの『はやとうり』は、夏はひっそり鳴りを潜め、秋に入って生存競争の相手がへたる頃、ガンガン生長する。5mを越える勢いでツルを伸ばし、一株100個前後の実をつける神がかった奴です。・・・ぬか漬けがうまいんですよ。」
「はやとうり」 誘引範囲を越える元気さ! 撮影2016年10月11日 ↑
味は無し、歯ざわり良しの「はやとうり」は、私(取材記者)も御すそ分けにあやかったひとり。寒くなった頃に食卓をにぎわす里山ならではの食材です。鍋一杯、きんぴらごぼうのように炒めていただきました。↓
・・・ 特集 母屋リビング・リフォーム その1 ・・・
今回、ご紹介する特集は、千葉ラボの母屋(築110年の古民家)のリフォームです。【二間続きの和室(大広間)と廊下】をリビングルームに改装してリスニングルームを作りました。
1)母屋リビングルーム:和室/下り壁の撤去 (画像クリック:拡大します)
和室の土塗り壁は埃っぽく隙間があり、温熱環境を作るのには適しません。広い空間のリビングにするために、和室まわりの天井から鴨居までの下がり壁(真壁塗り)を取り除きました。
2)母屋リビングルーム:柱梁の新・接合位置 (画像クリック:拡大します)
そして、和室・下り壁を撤去した後の柱と梁の旧・接合部は、柱側に欠損箇所があり、その補強のための新・接合位置を天井側へ移動しました。↓
・・・亭主曰く、和室(廊下)まわりの全ての土塗り壁や鴨居、長押を撤去しましたが、大広間をふたつに分ける間口二間の飾り長押だけは、古民家らしさを残し、いじりませんでした。ここだけ飾り長押の上に、梁が廻っています。①②↓
3)母屋リビングルーム:梁のCLT補強 (画像クリック:拡大します)
広いスペースのリビングを考えて、廊下と座敷の境にある柱を3本撤去することにしました。柱の撤去で不足する梁の断面を補強するために、2×4材を利用したCLTで梁を作りました。2×4 2×8 2×10 2×12などの組合せで仕上げています。↓
4)母屋リビングルーム:柱梁の新・接合部(剛接合)(画像クリック:拡大します)
亭主曰く、「柱と梁は 穴を開けて載せてあるだけです。横力には頑張れません。建物のコーナーは壁をとっぱらって全開口にしていますので、その建物の耐力を保つために、2×4を接着剤で固めたCLT補強の4方向ラーメン構造を、ちょっと考案して作りました。地震時に柱と梁の接合部(剛接合)が ボッキと折れるようなら 設計意図通りの壊れ方だと考えています。」
母屋リビングルーム:4方向ラーメン剛接合 撮影2019-06-12↓
5)母屋リビング・リスニングルーム:音響スピーカー工事
2013年11月、千葉ラボ亭主が初めて古民家に踏み入り、二間続きの大広間(和室)を見渡した時、この広さなら劇場版オーディトリアムがやれるとワクワクしたそうです。・・・
亭主曰く、本来なら、【ウーハー(低音)】と【スコーカー(中音)】、それに【ツイーター(高音)】の3ウェイ方式が大型音響システムの定番ですが、加齢によって高音が聴こえなくなります。若い人には高音域の不足感がでるかも知れませんが、千葉ラボでは【ウーハー】と【スコーカー】の2ウェイ方式でリスニングルームを組立てています。
リビングコーナー側:音響セット撮影2019-01-17↓
天井側:ウーハー(低音)スピーカー 工事
低音域の響きには少々うるさい千葉ラボ亭主。その低音用のウーハースピーカーを頭の上の天井に埋め込んで、リビング空間に響き渡らせようと考えました。・・・そのために、ウーハースピーカーを取付けた1間×3尺(3×6合板)の【どでかい音響Box】を作り、天井内・屋根裏の2ヶ所に運び込みました。ひとり親方(亭主)にとって、大掛かりで難儀な工事です。「このサイズのBoxを2つ作るのに、だいぶ時間がかかりました(大汗)。」という亭主。
◆リビングルーム側:ホーン型(中音)スコカー スピーカー 工事
亭主曰く・・・映画館とか劇場で大きな音を出すために使われる、中音用のホーン型スコーカーを天井からぶら下げました。音の広がりを考えると横型に置くのが常識ですが、部屋の幅もそれほど広くないので、常識やぶりで縦に吊り下げてみました。
編集室より)
建物の南西の角を全開口した後の耐力壁量について、千葉ラボ亭主は、母屋の2ヶ所にあった既存の戸袋を取り除いて、新たに、地震時の動きに耐えるためのCLT耐力壁を作っています。今回、紙面の都合でご紹介できておりませんが、【母屋リビングルーム・リフォーム その2】で、床暖、ウッドデッキ、廊下補強工事とともに、ご紹介させていただきます。・・・それでは、2020年2月号でお目にかかります。
千葉ラボ:古民家(再生)New garden life のバックナンバーです。
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シリーズ(1)
シリーズ(2)
シリーズ(3)
シリーズ(4)
◆今月の特集:【母屋:リビングルームのリフォーム その1】
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裏山を背景にして手前に拡がる香取の里/千葉ラボから、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。 オーセブン株式会社 代表取締役 七海 崇
・・・ 1月 「里山」に思う ・・・
母屋:茅葺の屋根裏
・・・こんなことがありました。「初めて母屋(リビングルーム)の屋根裏に入ろうとして、天井板を持ち上げた瞬間です。いつもと違う空気に囲まれ、『何だろう』とライトで屋根裏を見渡しました。すると、光りが届かない奥のほうに(私が勝手に思うだけですが)、私を見据えるこの家の主(あるじ)が居たのです。ぎょ!っとしました。私は、100年昔の先人の思いに触れたような気がして、頭を下げ、丸太の梁が並ぶ向こう側に無言の挨拶をしました。」 ・・・亭主が里山に移り住んで3回目の冬(2016年1月)の出来事でした。
母屋:撮影20160508 → 茅葺の屋根裏:撮影20160226↓ | ![]() |
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![]() 天井板:はずしたところ 撮影20160226 | ![]() 天井裏① 撮影20160226 | ![]() 天井裏② 撮影20160226 |
![]() 天井裏③ 撮影20160730 | ![]() 音響スピーカー工事 撮影20160730 | ![]() 天井裏に先人の道具 |
裏山の‘はやとうり’
千葉ラボの裏山。亭主は、「ここの『はやとうり』は、夏はひっそり鳴りを潜め、秋に入って生存競争の相手がへたる頃、ガンガン生長する。5mを越える勢いでツルを伸ばし、一株100個前後の実をつける神がかった奴です。・・・ぬか漬けがうまいんですよ。」
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味は無し、歯ざわり良しの「はやとうり」は、私(取材記者)も御すそ分けにあやかったひとり。寒くなった頃に食卓をにぎわす里山ならではの食材です。鍋一杯、きんぴらごぼうのように炒めていただきました。↓
![]() 「はやとうり」伸び始め | ![]() 「はやとうり」一株の生長力 | ![]() 収穫:撮影2018年11月21日 |
![]() はやとうり | ![]() はやとうりの種 | ![]() 一人前↑×20人前完成 |
・・・ 特集 母屋リビング・リフォーム その1 ・・・
今回、ご紹介する特集は、千葉ラボの母屋(築110年の古民家)のリフォームです。【二間続きの和室(大広間)と廊下】をリビングルームに改装してリスニングルームを作りました。
母屋:リビング工事 撮影20160718 → 母屋:リビングルーム 撮影20190226↓ | ![]() |
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和室の土塗り壁は埃っぽく隙間があり、温熱環境を作るのには適しません。広い空間のリビングにするために、和室まわりの天井から鴨居までの下がり壁(真壁塗り)を取り除きました。
![]() ①和室下がり壁:解体前 撮影20160524 | ![]() ②土塗壁・長押:撤去 撮影20160525 | ![]() ③鴨居も撤去 撮影20160526 |
2)母屋リビングルーム:柱梁の新・接合位置 (画像クリック:拡大します)
そして、和室・下り壁を撤去した後の柱と梁の旧・接合部は、柱側に欠損箇所があり、その補強のための新・接合位置を天井側へ移動しました。↓
![]() 柱梁接合:欠損部分 撮影20160528 | ![]() 現状より30cm上で接合 撮影20160703 | ![]() 新・柱梁接合部 撮影20160718 |
![]() 間口二間の下り壁解体 飾り長押のみ残す 撮影20160612 | ![]() 梁位置:飾り長押30cm上 ①撮影20160703 | ![]() 長押の上に新・接合部 ②撮影20160718 |
3)母屋リビングルーム:梁のCLT補強 (画像クリック:拡大します)
広いスペースのリビングを考えて、廊下と座敷の境にある柱を3本撤去することにしました。柱の撤去で不足する梁の断面を補強するために、2×4材を利用したCLTで梁を作りました。2×4 2×8 2×10 2×12などの組合せで仕上げています。↓
![]() ①梁通し位置 撮影20160529 | ![]() ②柱に梁(横架材2×10) 通す 撮影20160529 | ![]() ③梁CLT補強:接着貼 撮影20160529 |
![]() ④柱に横架材用欠き込み 加工 撮影20160530 | ![]() ⑤梁CLT:接着貼合せ 撮影20160530 | ![]() ⑥梁CLT:接着貼合せ 撮影20160530 |
![]() ⑦梁CLT:接着三層仕上 撮影20160530 | ![]() ⑧梁CLT:接着三層仕上 撮影20160530 | ![]() ⑨梁CLT:接着三層仕上 接着剤による貼り合せ |
4)母屋リビングルーム:柱梁の新・接合部(剛接合)(画像クリック:拡大します)
亭主曰く、「柱と梁は 穴を開けて載せてあるだけです。横力には頑張れません。建物のコーナーは壁をとっぱらって全開口にしていますので、その建物の耐力を保つために、2×4を接着剤で固めたCLT補強の4方向ラーメン構造を、ちょっと考案して作りました。地震時に柱と梁の接合部(剛接合)が ボッキと折れるようなら 設計意図通りの壊れ方だと考えています。」
母屋リビングルーム:4方向ラーメン剛接合 撮影2019-06-12↓
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![]() ①剛接合デザイン 撮影2016-06-28 | ![]() ②南西角の新・接合部 撮影2016-06-30 | ![]() ③南西角の接合部 裏側 撮影2016-06-30 |
![]() ④南西角の接合部 正面 撮影20160704 | ![]() ⑤母屋:コーナー耐力補強 撮影20160706 | ![]() ⑥母屋:コーナー耐力補強 撮影20160706 |
![]() ①剛接合:CLT補強 撮影20160712 | ![]() ②新・接合部CLT補強 撮影20160712 | ![]() ③リビング側に新・接合部 CLT補強 撮影20160712 |
5)母屋リビング・リスニングルーム:音響スピーカー工事
2013年11月、千葉ラボ亭主が初めて古民家に踏み入り、二間続きの大広間(和室)を見渡した時、この広さなら劇場版オーディトリアムがやれるとワクワクしたそうです。・・・
亭主曰く、本来なら、【ウーハー(低音)】と【スコーカー(中音)】、それに【ツイーター(高音)】の3ウェイ方式が大型音響システムの定番ですが、加齢によって高音が聴こえなくなります。若い人には高音域の不足感がでるかも知れませんが、千葉ラボでは【ウーハー】と【スコーカー】の2ウェイ方式でリスニングルームを組立てています。
リビングコーナー側:音響セット撮影2019-01-17↓
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天井側:ウーハー(低音)スピーカー 工事
低音域の響きには少々うるさい千葉ラボ亭主。その低音用のウーハースピーカーを頭の上の天井に埋め込んで、リビング空間に響き渡らせようと考えました。・・・そのために、ウーハースピーカーを取付けた1間×3尺(3×6合板)の【どでかい音響Box】を作り、天井内・屋根裏の2ヶ所に運び込みました。ひとり親方(亭主)にとって、大掛かりで難儀な工事です。「このサイズのBoxを2つ作るのに、だいぶ時間がかかりました(大汗)。」という亭主。
![]() 天井:ウーハー低音スピーカー 撮影20190117 | ![]() 屋根裏:ウーハー低音スピーカー配置完了 撮影20160802 |
![]() ①スピーカーBoxづくり 撮影20160721 | ![]() ②ウーハー低音スピーカー面 撮影20160721 | ![]() ③スピーカーBox仮組立 撮影20160724 |
![]() ④屋根裏へスピーカー持込 撮影20160729 | ![]() ⑤屋根裏:スピーカー置場所 撮影20160726 | ![]() ⑥屋根裏へスピーカー持込 撮影20160729 |
![]() ⑦スピーカーBox組立て前 撮影20160729 | ![]() ⑧スピーカーBox組立 撮影20160729 | ![]() ⑨スピーカー斜め設置 撮影20160803 |
◆リビングルーム側:ホーン型(中音)スコカー スピーカー 工事
亭主曰く・・・映画館とか劇場で大きな音を出すために使われる、中音用のホーン型スコーカーを天井からぶら下げました。音の広がりを考えると横型に置くのが常識ですが、部屋の幅もそれほど広くないので、常識やぶりで縦に吊り下げてみました。
![]() ホーン型スコカースピーカー正面縦吊り 撮影20190107 | ![]() ホーン型スコカースピーカー側面縦吊り 撮影20190107 |
![]() 鋳鉄製ホーン型スコカー 撮影20160711 | ![]() 鋳鉄製ホーン型スコカー 撮影20160711 | ![]() 音響スピーカー配線 撮影20160723 |
![]() スコカースピーカー木枠 撮影20160715 | ![]() スピーカー斜め吊りテスト 撮影20160715 | ![]() 柱梁接合部にセット正面 撮影20160905 |
編集室より)
建物の南西の角を全開口した後の耐力壁量について、千葉ラボ亭主は、母屋の2ヶ所にあった既存の戸袋を取り除いて、新たに、地震時の動きに耐えるためのCLT耐力壁を作っています。今回、紙面の都合でご紹介できておりませんが、【母屋リビングルーム・リフォーム その2】で、床暖、ウッドデッキ、廊下補強工事とともに、ご紹介させていただきます。・・・それでは、2020年2月号でお目にかかります。
千葉ラボ:古民家(再生)New garden life のバックナンバーです。
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