SurfacePro X
 2007年に発売されたiPhoneには本当に驚かされました。iPhone以前にあったブラックベリーとなどのパームトップコンピュータは一部好事家かワーカーホリックだけが持つニッチなマーケットでしかありませんでが、それが老若男女だれもが持つありふれた「スマホ」にとって変わりました。

Apple Inside Macintosh Volume I
 iPhone以前と以後の何が違うのか。それにはまずMacの黎明期から話さなければなりません。
AppleがMacintoshを発売した時、まだMacのグラフィカルなユーザーインターフェースは一般的ではありませんでした。DOSのテキストベースのUIだったり、それぞれのアプリケーションが統一性なく好き勝手にUIを作っていた時代です。
そのため、Appleは開発者向けの技術書「Inside Macintosh」の中で “The Macintosh User Interface Guidlines”という章に50ページ弱を費やして、Macのユーザーインターフェースはどういうものかを説明し、アプリケーションはどう振る舞うべきかを規定しました。
 この規定は浸透するにつれてMacの操作の“当たり前”となり、Windowsなど他のものにも伝搬していきます。Appleからジョブズを追い出したスカリーは世界初の手のひらデバイス「Apple Newton」を世に出しますが、それもまたこの規定から逃れられていませんでした。その後、パームやブラックベリー、WindowsMobileなど様々な小型デバイスが出ましたが、全て同様です。小さな画面に小さなメニュー、小さなチェックボックス、細すぎるスクロールバーが並び、それを操作するにはタッチペンが不可欠でした。規定というよりもはや呪縛といって良いでしょう。
 


 
 そこにiPhoneが出て、後に開発者がアプリを制作できるようになりましたが、Appleはここでもやはり一番最初のドキュメントとして「ヒューマンインタフェースガイドライン」を用意しました (https://developer.apple.com/design/human-interface-guidelines/)。タップ、スワイプといったユーザー操作から、ナビゲーションバー、タブバーなどの使い方など、アプリがやるべきこと、そしてやるべきではないことが細かく規定されています。
 PCでは当たり前だったメニューバー、スクロールボックス、チェックボックス、ラジオボタンなどはありません。それらは元はApple自身が規定したものにも関わらずです。そしてペン不要で指だけで操作できるUIを新たに規定し、「小さなPC」を「スマートな電話」に仕立て直しました。これは瞬く間に“当たり前”となり、アンドロイドなどが追従していくこととなります。

 iPhoneで使われる技術や機能だけを見たなら目新しいものは何ひとつないのですが、この「インターフェースガイドライン」こそがiPhoneとそれ以前を分ける決定的な違いとなっています。
 


 
 スマホが登場して暫くするとPCとスマホの間に大きな“タブレット”市場がありそうだということになり、Appleがいち早くiPadを発売します。この最初のiPadは本当にまったくもって「ただ大きくなっただけのiPhone」でした。後にiPadの大きさを活かしたUIや機能が追加され、さらにはiOSとiPadOSが分化してiPhoneとiPadは独自の道を歩むことになりますが、それでもiPadのUIの基本設計はiPhoneと変わらず、iPhoneで規定したヒューマンインターフェースガイドラインに則ったものになっています。
 
 iPadでマウスが使えるようになりましたが、MacでiPadのアプリが動くようになったのに新しいMacはタッチ対応にはなりませんでした。この辺にAppleのタッチ操作とマウス操作の線引きがあるようです。このこだわりはパソコンとスマホ両方のインターフェースガイドラインを規定したAppleだからこそでしょう。
 


 
 巨人マイクロソフトはこういった世の中の動きに黙っているはずもなく、「あらゆるところでWindowsを」を掲げてスマホとタブレットの市場に攻勢をかけようとしましたが迷走し、結局スマホ市場から撤退してしまいました。
 この迷走について話すとまた無駄に長くなるのですが、つまるところ「従来のWindowsのプログラムが動かないものは "Windows" ではない」に尽きます。WindowsPhoneしかり、WindowsRTしかり。。。
 Windowsタブレットも思うように伸びていません。これは多分にインテルのCPUの問題があり、それもあってArm版Windowsの開発を進めているのでしょうが、まだ結果を出せていません。

 そんな中でWindows11が発表されました。Windows8でタッチ操作に向けて導入されたメトロUIはハリボテのタイルを被せただけの本当に残念なものでしたが、11ではそのメトロUIは完全に消え去り、タッチで操作しやすいように細かなところが地道に改良されています。
 SurfacePro XにWindows11を入れてみましたが、マウスが無いと難儀する場面はだいぶ減りました。マウスがないとどうしようもないところもまだまだありますが、そんな時はマウスを付けてしまえば良いのです。「だいたいマウスなしで使える」のラインが上がるとWindowsタブレットの存在意義が一気に高まります。いいところまできてると思います。

 タッチありきのUIを大型化したiPadと、マウス基本のPCをタッチ対応にして小型化したWindowsタブレット。どちらにも長短があり、どちらにも需要があると思います。iPadはiPhoneと同じ操作で直感的に便利に使えるのですが、もっとPCライクなことができたらいいのに。。。と思うことも多々あります。Androidタブレットが後退してできたスキマにWindows11でWindowsタブレットが割り込んでいくことを期待しています。


 
 ここまで話しておいて申し訳ないのですが、O7CADはマウスとキーボードを使った操作を念頭に開発しており、タッチ操作には対応しておりません。07CADのたくさんの機能にアクセスするにはメニューが不可欠ですし、タッチは細かな操作には向いていません。何卒ご了承ください。
 タブレットやスレート型のPCで使用される際はマウスとキーボードをご用意ください。またO7CADはArm版Windowsには対応しておりません。

 O7CADと違い、弊社iPadアプリ「スピードプランナー」はまずタッチ操作のタブレット端末ありきで、それを使ってササっとできると嬉しいことは何だろう、と考えて企画&設計しました。

 マウスとキーボードでの操作とタッチでの操作は前提となるものが違うため、企画段階から大きく変わってきます。弊社はそれぞれに合わせた商品を開発しております。ただし今後もしWindowsタブレットがもっと普及するようなことがあれば、その前提が変わってくるかもしれません。注視していきたいと思います。