【コラム】2023/07/11
技術・哲学・利便性 と ビジネス
営利企業として、新しい商品やサービスを世の中に出す時、重要な選択を迫られることがあります。
これまでになかったジャンルの商品やサービスが生まれた時、それが新しい市場を形作って、大きなお金が動くということがあります。例えば「携帯電話」が生まれた時や、「ふるさと納税」というシステムが生またとき、その商品やサービスに人とお金が一挙に集まってきました。
携帯電話の場合はいわゆる携帯キャリア企業のユーザー獲得争いがあり、ふるさと納税でもそのサービスを仲介する巨大なサイトがテレビ広告を打って顧客獲得を争っています。古くは、ビデオテープの規格「VHS対ベータ」などもありましたが、今世界で繰り広げられているこのような市場獲得争いの一つに電気自動車(EV)の規格争いがあります。
電気自動車は、ガソリンエンジンの自動車に比べて開発、生産がしやすく、世界中の多数の企業が参入しています。電気自動車の車体価格はやや割高ですが、燃費も良く、おそらく故障もしにくいでしょうから多くの顧客を獲得する可能性があります。一つの弱点は、航続距離と充電設備の問題です。
充電設備の問題をどのように解決するかという課題は、各国の各メーカーが抱えています。電気自動車の航続距離は150km〜300km前後と短いものが多く、充電はガソリンの給油に比べて時間がかかるため、広く普及するには充電設備がガソリンスタンド以上に設置される必要があります。
充電設備にはいくつかの規格がありますが、日本ではCHAdeMO(チャデモ)の普及が多く、欧米ではテスラ形式を採用するメーカーが増えています。CHAdeMOはトヨタ自動車、日産自動車、東京電力などが主体になって発足した規格で、EVの普及には統一規格が必要だという思いからスタートした、企業の枠を超えた取り組みです。その一方で、テスラは初めから急速充電を目指した技術先行の規格であると云えます。
多少充電時間がかかろうとも、とにかく統一規格の充電設備を広げようというCHAdeMOに対して、EVには急速充電が必要であるというテスラ。二つの哲学のぶつかり合いに見えます。CHAdeMOはEVがガソリン自動車にはなかなか勝てない世界を想定していて、テスラはガソリン自動車を駆逐する意思が感じられます。
さて、どうなるでしょうか。